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 ガキン!ガキン!

 所変わって校舎外。人通りも少ない放課後の校庭で、
金属同士がぶつかり合う音が連続して響いていた。

あき「はっ!」

稜「っと」

 あきの武器である鶴嘴「烈風」が稜の胸を掠める。

稜「よっ」

あき「うわっと!」

 一旦下がって再度近づき、今度は穿たれる烈風を弾きつつ、
残る手であきの胸元を狙う。慌てて避けるあき。

稜「おしい」

あき「ふぅ」

 そのまま距離をとる。これでまた振り出しに戻った。
このようなやり取りが、先ほどから延々と続いていた。
 距離を詰めて手数に任せてスタンデバイス「シャイニングハート」を当てたい稜と、
そんな稜の思惑を烈風のリーチとローラーブレードの動きで防ぐあき。
 結果として、仕掛ける稜と捌くあき。という構図が出来上がっていた。

稜「…埒が明きません」

あき「まあ…ねぇ…」

 あきが苦笑いする。状況が変わってないことへの反応だろうが、
埒が明かないのはこちらもおなじ。むしろこっちは更に状況が悪い。
 大型の武器である烈風では、先に仕掛ける際のリスクが大きい。
普通の相手ならリーチを活かしてごり押しする事も可能だろうが、
今戦っている相手の速度は尋常ではない。1回のミスが致命的だ。

稜「しょうがないですね…」

 そう言って、稜は更に距離をとった。

あき「…?」

稜「ストリームフィン」

 不思議に思ったあきは、その後の稜の姿を見て、その意図を悟った。
その場にしゃがみ、両手を地面につけた稜の格好。
そして、稜のアクティブドレスの装備、ストリームフィンが起動する。

あき「クラウチングスタイル…!」

 トップスピードでこちらの懐に一気に飛び込もうというのか。
かつて帽子を取り合った時の姿がフラッシュバックする。
これは間違いなく雌雄を決する一撃であろう。
 それは彼女の周りに発言した、赤色の太陽を思わせる「極光」が何より雄弁に語っていた。

あき「聖!!烈風!! 頼んだよ!」

[[ OK ]]

 それに答えるが如く、あきの全身を覆う「子」達から白色の煌きが登る。

稜「コレで決めるです」

あき「それはこっちの台詞だよ!」

 そのやりとりのあと、一瞬の沈黙。
そして、赤色の太陽を衝撃波のように残し、稜が駆け出した。

あき「D(ダッシュ)!」

 同時に、あきの烈風が覚醒する。

あき「レヴ・トルネード!」

 振るわれた烈風は、突進する稜の前に風の渦を作り出した。
だが・・・

あき「間に合わない?!」

 以前は追いかけられる立場だったため、具体的な速度までは見ていなかった。
信じられない速度。風が現れ始めて影響を与えるまでに、有効範囲内から抜けようとしている。

稜「むっ」

 しかし、幾陣かの風が稜を捕らえ、わずかながら速度が落ちた。

あき「くっ!」

 その僅かな隙をついて、烈風を構え直して速攻で振り下ろす。

稜「っ!」

 稜の顔が顰む。目の前の鶴嘴は稜の体を的確に捉えていた。
だが、稜はあろうことかこの場で更に加速した。それは自身の限界をも超える速度。
鶴嘴にストリームフィンを破壊され、背中を掠めながらも稜はついにあきの懐へともぐりこんだ。

あき「しまった!!」

 目の前に稜の顔。自身は烈風を振り下ろした直後というどうしようもない状態。
成すすべなくあきは「シャイニングハート」の一撃を受けた。

バチィ!

 感電するような音と共に、あきの体が吹き飛ばされた。

あき「うあっっ!!」

あき(冴…!)

 全身を貫く痺れ。意識を飛ばされそうになりながら、あきは親友の姿を思い浮かべていた。
今日という日のために頑張ってきた冴。だが、先ほどの九郎を見るに最後の目的は達成されていない。
最後だけは自分の手で。そう思い心を鬼にして一人行かせた。それがこんな結果を生むとは…

 許されない

 何だか分からないけど

 こんなのは 許されないんだ!!
 
あき「あああああっ!!!」

稜「なっ!?」

 めったな事では驚かない稜が目を見張った。
吹き飛ばされたあきは、体制を整えるだとか衝撃に備えるだとか、
通常成すべきことを一切放棄し…残る力で振り下ろした烈風を再度稜へたたきつけた。

稜「…!」

 いくら俊足を誇る稜とはいえ、技後の硬直を狙われてはどうしようもない。
今度は稜が、成すすべなく烈風の一撃を胸元へ受け吹っ飛ばされた。

稜「わ」

 そして、飛ばされた先には残っていたレヴ・トルネード。
巻き込まれ、散々翻弄された挙句地面に投げ出された。

稜「まさか反撃してくるとは…やるです」

 何とか着地した稜だったが、そのまま膝をついた。
技後に胸元への衝撃と風による翻弄を受けた事で、一気に体力を消耗してしまった。
元々活動後の身である稜の体力は、そこで尽きた。

あき「うぐっ!」

 対するあきは、何の制御も出来ないまま地面にたたきつけられた。
VSS「聖」を纏っていなければ怪我をしていたかもしれない。
「聖」に感謝しつつ立ち上がろうとするが起き上がれない。
 先ほどのシャイニングハートの一撃があきの自由を奪っていた。
暫く休まないと動くことは出来ないだろう。

あき「ううっ!」

 だが、痺れる全身を引きずるようにして、あきは進む。

あき「うあっ」

 再度崩れ落ちたあきは、立ち上がろうとして目の前に立つ影に気づく。

稜「…」

 稜だった。足がおぼつかないながらもしっかり立ち、あきを見ていた。

あき「…今回も、ボクの負けみたいだね。ボクはもう、戦えない…」

 悔しそうに下を向く。

稜「そうとも言えないです。稜も、もう戦えないです」

 そう言うと、稜はあきを起こした。

稜「行くです。」

あき「えっ・・・?」

稜「…?行きたいように見えたですが、行きたくないのですか?」

あき「あ、いや、保健室には行きたいけど…、いいの?」

稜「嫌でも行くなら、一緒に行った方がいいです」

あき「…ぷっ、あはは! 確かにそうかもね。わかった、一緒に行こう」

稜「じゃ、いくです」

 そして二人は、互いが互いの肩に手をかけて、歩き出した。
 

あき「あ、そういえば・・・」

 あきはそういって、肩から手を離し、居住まいを正した。

あき「科学部 兼 世界征服部 「白煌」御堂あき。だよ」

 そういって、礼をした。

稜「稜は稜です。」

 対して稜もぺこりとお辞儀をする。
お互いふらふらだったが、気にはしなかった。

あき「って、自己紹介になってないし。…まったく、まあ大体知ってるからいいけどね」

 そういって、あきは自分の手帳を見る。

あき「陸上部 兼 正義の味方部 「赤陽」九行稜…か。」

稜「…ストーカーですか?」

あき「違うよ!相手の部の情報を集めるのも大切でしょ!?」

稜「そうですか。」

 興味なさそうに歩き出した稜だったが、ふと足を止めた。

稜「さっちゃんの事は知ってるですか?」

あき「さっちゃん…? ああ、蒼雷ちゃんか。そーねぇ」

 また手帳を見る。

あき「長刀部 兼 正義の味方部 「蒼雷」雨宮さつき。
   長刀部のエースで、大会優勝経験も多数あり。
   流派は月華流で、先代「蒼雷」にして現星徒会長の水乃緒れい先輩も同じ流派。
   と、そんな所かな」

稜「勉強になりましたです」

あき「でも、なんで蒼雷ちゃんの事を?」

稜「何でもいいです」

 そっぽを向いて歩き出す稜に、あきのいたずら心が芽を出した。

あき「…ははーん。そっかぁ。赤陽ちゃんは、蒼雷ちゃんがいいのかぁ」

稜「…何でそういうことになるですか」

 そう言って振り向く稜の顔が赤いのは果たして夕焼けの所為だろうか。

あき「照れなくてもいいよ。うんうん、青春だねぇ」

稜「・・・」 

 無言でシャイニングハートを起動させる稜。

あき「まあまあ、また情報入ったら教えてあげるからさ」

稜「むむ…」

 その提案に負けたのか手を止めて歩き出した。
そのまま二人は無言で、しかし言いようも無い心地よさを感じながら校舎へと入っていった。



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