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翔子「この辺でええやろ」

さつき「はい」

 そう言って二人は立ち止まった。場所は和麻達が対峙している所と逆の昇降口。
二人は距離を取って対峙し合った。

さつき「アークセイバー、雨宮さつき、参ります!」

翔子「行こか、桜!」

 奇しくも、以前さつきが出した果し合いと同じ構図だが。

迸る蒼光。それは群青の空を越えて穿つ雷が如く。

答えるが如く吹き出す桜光。それは舞い散る桜のように鮮やかに。

 開始前から二人は極光を発現していた。それは全力の証。
開幕からお互い手加減なしの攻撃が放たれた。

ガガガガ!

 翔子の棍棒とさつきの長刀がぶつかる音が響き渡る。
双棍で手数に勝る翔子に対し、リーチで勝るさつきが応戦する。
 さつきの横薙ぎを翔子が払い、しかし払われたさつきは勢いを利用して間合いを調整し、
翔子の反撃を防ぎながら態勢を立て直す。
 翔子の連撃をさつきが長刀の柄の部分まで使いながら捌き、
僅かな隙を突いて長刀越しの当身で翔子との間合いを開ける。

 実践ならではの攻防にもかかわらずその姿は全く美しさを欠いていない。
それは二人の極星が織り成す蒼と桜のワルツ。
場所が場所なら万人の喝采を受けるであろう演舞にも似た戦いは、
しかし誰もその姿をとどめることなく進んでいく。

翔子「んー、蒼雷ちゃん、強うなったね」

さつき「ありがとうございます」

 一度距離を置いた翔子は、さつきに賞賛の声を送る。
実際、以前戦ったときより明らかに強くなっている。
 受けたさつきは素直に礼を述べた。

翔子「ほな、第2ラウンドや」

さつき「はい!」

 そして、再度演舞が始まる。しかし、先ほどとは多少様子が異なっていた。

翔子「ほらほら!どうしたん!」

さつき「くっ!」

 楽しそうな翔子の声とは裏腹に、さつきの声に焦りが篭りつつある。
翔子の動きが変わったのだ。先ほどまでとは比べ物にならない速度と威力。
 さつきを持ってしても捌ききれなくなってきていた。
肩を掠める棍棒を交わしながら、改めて距離を取る。

さつき「はぁはぁ…」

さつき(強い…!)

 改めて、相手の力量を見せ付けられた気分だ。
考えてみれば、以前戦った時も翔子は汗一つかいていない。
そして、その後であの鈴鳴はやなと互角に戦っていた。
 元々ミーハーなのもあって翔子の事も多少は調べた。
中等部の頃ははやなと双璧を成す存在として知られていたという。
恐らく実力は大差ない。そして、はやなは今代の姫なのだ。
 自然と翔子の実力も窺い知れる。

翔子「どした、ここまでにする?」

さつき「…いえ!」

 降伏の問いかけに否と答え、長刀を構えなおすさつき。
だが、実際問題として次は捌ききれないと感じていた。

ならば…最大の力を以って立ち向かうのみ。

 さつきの目が強い光を帯びた。迸る雷光が更に輝きを増す。

さつき「月華流奥義…」

 技の溜めに入ったさつきの長刀が、緩やかなアークを描き停止した。

翔子「あー、本気の本気やね。なら、うちも行くで!」

翔子「百華千万…」

 対して、翔子の棍棒が鋭いクロスを描き停止する。

さつき「蒼星鳥!」

 そして、裂帛の気合と共に蒼色の鳥が放たれる。

翔子「天の川!」

 答えるが如く、翔子から桜で出来た天の川が放たれた。

数瞬の後、激突。蒼と桜の光が弾け飛んだ。

 そして、鳥は天の川に完全に遮られた。

翔子「どうやらうちの…」

 それを見た翔子は結果を言おうとして目を剥く。

さつき「月華流奥義改…」

 さつきが、再び蒼星鳥の構えに入っていたからだ。

翔子「もう一発来るん?!」

さつき「双星鳥!!」

 2羽目の蒼鳥が空を切る。駆ける蒼鳥は一羽目とぶつかり…
倍以上もある、巨大な蒼鳥が誕生した。

翔子「わわっ!」

 成長した鳥は、その身を元の小さな鳥へと戻しながらも天の川を貫いた。

さつき「やった…!」

 さつきが思わずガッツポーズを取る。
天の川を突破した鳥と翔子との間には何も無い。
鳥はそのまま翔子の胸元に吸い込まれ…

ぽぉぉん!

 降って来たボールによって掻き消された。

さつき「えっ?」

翔子「さっきこっそりな。まさか最後の決め手になるとは思わんかったわ」

 そう言って微笑む翔子を見て、やはり一筋縄ではいかないと気を引き締めるさつきだった。
しかし、対する翔子も内心はそこまで余裕があるわけではなかった。

まさか天の川を突破してくるとは思わんかったわ…。認識を改める必要があるな。

 一瞬、真剣な顔になる翔子。
しかし、視界の端にとある姿を認めて、再び笑顔が戻ってきた。

翔子「ま、きりのええところで、タイムアップや」

さつき「えっ?」

 そう言われて、さつきが後ろを振り向くのとほぼ同時に声がかかった。


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