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はやな「翔子ちゃん!さっちゃん!」
騒ぎを聞きつけたはやなが、保健室から出てきたのだ。
さつき「はやな先輩…」
翔子「はーちゃん!」
はやなに気づいた二人は保健室の前まで向かう。
はやな「外が騒がしいと思ったら…。何でこんな所で?」
翔子「あー、追加の活動や。な、蒼雷ちゃん!」
さつき「え?あ、はいそうです。なので私達も。」
はやな「なるほどー。ということは、稜ちゃんも?」
翔子「赤陽ちゃんなら途中でうちの御堂ちゃんと戯れとるよ。」
はやな「二人してがんばってたんだねぇ」
さつき「あ、その…もう一人…」
はやな「?」
はやなが首をかしげると、そのもう一人が戻ってきた。
和麻「終わったようですね」
はやな「紅刃さんじゃないですかー。」
和麻「…っ! …お久しぶりです」
はやな「こちらこそー。さっちゃん、もう一人って紅刃さんの事だったの?」
さつき「は、はい。多勢に無勢なところを、助けていただいて」
はやな「それはそれは。助けていただいてありがとうございます」
和麻「いえ。自分の大儀に従ったまでですから。…以前は失礼しました」
はやな「いやいやー。」
満面の笑顔でそう答えるはやな。和麻は、なんだか胸の使えが取れたような気がした。
翔子「しっかし、多勢に無勢ってうちら本格的に悪役やねー司木くん」
燈也「そうッスねー」
あき「まあ、そういう役割だからねー。」
話を振った燈也以外の声に振り返ると、多少ふらつきながらも稜とあきが歩いてきていた。
燈也「御堂先輩!」
さつき「稜さん!」
燈也とさつきが駆け寄り、各々を支える。
二人は安心したかのように支えてくれる者に身を預けた。
燈也「わっ…と、先輩、大丈夫ッスか?」
さつき「稜さん、しっかりしてください!」
稜「大丈夫です。休めば治るです」
あき「そういうこと。ちょっと辛抱してね」
燈也「お、俺は歓迎ですけど」
といって困ったように周りを見渡す燈也。
そして絶妙というか最悪のタイミングで翔子が合いの手を入れる。
翔子「仲ええねぇ。一緒に帰るだけの事はあるわ」
それを聞いて真っ赤になって身を離すあき。
冷静になると、介抱とはいえ燈也の胸に顔を埋めていたのだ。
周りからどう見られたか考えそうになって考えるのはやめた方がいいと思い直した。
翔子「で、本題にはいろか」
あき「!!そうだ!冴!」
そう言って、疲れているのも構わずはやなに詰め寄った。
あき「ティンクルセイバー!冴を返して!!」
はやな「はぇ…?」
あき「とぼけないで!うちの部員の鴇神冴だよ!!」
はやな「あー、征服部の黒い人ー」
あき「そう!…まさか正義の味方が人攫いなんてするとは思わなかったけど…」
はやな「はやや。ち、違いますよー。」
あき「何が違うの?!ここは味方部部室でしょ!今日、冴は大切な用事があるの!すぐ開放して!」
はやな「か、開放といわれてもー」
困った笑顔でおたおたするはやなに翔子が助け舟を出した。
翔子「それで、鴇神ちゃんは今何しとるん?」
はやな「えーと、さっき気がついて、今は征服部の手品の人とお話してるよ?」
あき「へっ?」
はやな「ですからー」
そういって、はやなに説明を受けたあきは、見る見る顔を真っ赤にした。
あき「ごめんなさいっ!」
はやな「いいですよー。黒い人を思っての事だしー」
そう言いながら、はやなは1つの事を思い出していた。
それは黒い人こと鴇神冴の経営するアクセサリショップ「鴇」での出来事。
今も仲良しの葵との仲を深めたいと言ったはやなに対して、
「私にもそういう友達が居ます」と言った彼女。その友達とはもしや…
稜「というか、倒れた人を保健室に運び込むのは当たり前なのです」
あき「う、うるさいなっ!大体、それならそうと説明してくれてもいいじゃない!」
そういって、今度は翔子を見るあき。
翔子「うちはきちんと説明したし、夕霞ちゃんも言うたはずやけどな」
あき「…冴が味方部部室に連れ込まれた。って聞いたんだけど…」
翔子「その通り。うちら保健室と言うより分かりやすいやろ♪」
あき「…はぁ。」
そういって悪びれもせずウィンクする翔子。
色々と疲れたあきはため息で返した。
稜「そういうわけで部活終了です」
がっし!
そういって部室に入ろうとする稜の肩に手が置かれた。
見ると、頑として首を横に振るあきがいた。
稜「…中に入れないと着替えられないのですが」
手の主に向かって怪訝な顔で問いかける稜。
対するあきは、激しく首というか頭を振って引き留める。
あき「だ、ダメダメダメ〜〜!わかった!ボクが相手をする!」
稜「意味がわからないのですよ」
あき「むしろ通りたかったらボクを倒していきなさい!」
何とか入ろうとする稜と、必死に留めるあきの姿を見て、
翔子が肩をすくめながらボソッと。
翔子「…さっきと立場が逆やね。ま、人の恋路をってやつやね」
さつき「……ぽっ」
その言葉からあきの意図を察したさつきが頬を赤らめる。
尤も、その頭の中に異性が居るかは定かではないが。
そして、わいわいがやがややっている保健室の中では…
九郎「風邪ですか…。良かった、大事に至らなくて。」
冴「…っ!(コクコク)」
九郎「ご自愛してください。拗れたら大変ですよ。」
冴「……の」
九郎「ん?どうしました?」
冴「………や」
九郎「そうですか。…?おや、その紙袋は?」
冴「!!!」
九郎「え?私に?開けていいのですか?」
冴「…!(コクコク!)」
九郎「分かりました・・・。と、これはセーターですか?」
紙袋を開けて出てきたのは、薄手の半そでセーターだった。
ちょっと綻びがある辺り、手作り感が出ている。
九郎「これを…私に…?」
冴「…日…から」
いつも小さい冴の声が、更に小さくなっている。
九郎「誕生日…。…着てみて、いいですか?」
冴「…い(コクコク)」
そう言うと、九郎はセーターを羽織った。
征服の上からだったが、それを見越して作ったのか結構似合っていた。
九郎「似合っていますか?」
冴「っ!(コクコク)」
九郎「そうですか、ありがとうございます。」
自分の作ったセーターを着てくれた九郎が満面の笑みで自分に微笑みかけてくれた。
そこで冴の気持ちは限界を突破した。
冴「〜〜っっ!!」
九郎「と、鴇神さん?!」
再びベッドに倒れる冴。心なしかその顔は幸せそうだった。
慌てた九郎だったが、その顔を見て、ひとまず安心した。
そして、一応熱などの状態を調べるべく、倒れた冴に被さるようにして額を触ろうとしていた。
そして…
同じ頃、ドアを死守するあきをあっさりとすり抜けたはやなが、
ドアを開こうとしていた事を九郎が知る由も無い。
はやな「ごー」
あき「ああっ!ま、待って!!」
はやな「…わわっ」
あき「…どうしたの?って、冴?! く、九郎くん何やってんの!」
九郎「ご、誤解です。私はただ…」
翔子「九郎くん、大胆やねー」
稜「やれやれです」
最後まで騒動の絶えないメンバーを尻目に稜はさっさと着替えに行き、
さつき「ま、待ってください」
それをさつきが追っていった。
そして、騒動は冴が起きだすまで続くこととなる。
かくして、現極星の1/3を巻き込む大騒動は終わりを告げた。
おまけ
征服部部室の奥、部長の席で夕霞が満足げにケーキを食べていた。
夕霞「ふむ…相変わらず八草重の作る菓子は絶品だな…」
遊「光栄です」
そう言って紅茶を煎れる遊の手に、見慣れないものが付いているのを、夕霞は見つけた。
夕霞「八草重、多少私的な質問だが、いいか?」
遊「はい。何でもご質問ください」
夕霞「そうか…。では、その腕につけているリングについて質問したい」
遊「リング…ですか。…はっ!?」
遊の悪役っぽく作った笑顔が凍結する。
夕霞「それは確か…黒帝の店のリングだろう?」
遊「は、はっ、左様です。」
辛うじて返答しながらも狼狽を隠しきれていない。
遊の着けているリングは、リースフルリングといい、
黒帝こと鴇神冴の店、「鴇」で販売されている結構有名なリングだ。
夕霞「ふむ、誰か縁を深めたい者が居るのか。適うといいな。片方はもう渡したのか?」
遊「い、いえ…」
夕霞「ほう、なるほど…」
言ってから、遊はしまったと思った。
リングは2つ一組となっており、縁を深めたい者の名を冴に告げ、
その者にリングを渡す事で、縁が深まるというリングである。
まあ即ち、リングをしているのを見る人が見れば、縁を深めたい者が居ることは一目瞭然であり、
リングを渡せていないということは、思いを告げていない相手が居るということである。
そんなわけで、決して学内では着けていなかったのだが、
今日は帰るところを呼び止められて慌てて来たため、外すのを忘れていた。
夕霞「作った以上は、渡してやれ。何なら手を貸してもいい」
遊「い、いえ!そのような事は!」
夕霞「遠慮するな。部員の望みを適えるのも部長の役目だ」
遊の狼狽は際限なく増していく。
ここまで説明すれば、補足は必要ないだろうが、
片方のリングを渡すべき相手は、今目の前に居たりするのだ。
遊「こ、コレはっ!私がっ!」
夕霞「うん?自分が渡したいのか?」
遊「そ、そうであります!」
既に口調が変だが気にしている余裕は無いようだ。
夕霞「そうか、まあ何かあったら言え。私に言い難いなら他の部員でも協力してくれるだろう」
遊「も、問題ありません、大丈夫です!」
他の部員に夕霞がこの事を告げる…。
考えるだけで目の前が真っ暗になりそうな事態である。
夕霞「まあいい。この話はここまでとしよう」
遊「あ、ありがとうございます…」
何とか立ち直った遊は、紅茶を煎れ直した。
そのリングに込められた願いの分、丁寧に。丁寧に。
いい香りのする紅茶の湯気が立ち上る征服部部室では、静かに時間が過ぎていった…。
【END】
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