1階からお母さんがご飯だと呼んだので、悪いけど持ってきてーと返事をする。 今は一分一秒とて惜しい。今日手に入れた極上の獲物を早く料理したいから。 部活柄離さなかったコレがこーんないい獲物を吊り上げてくれるなんて☆ 柚木詩子は、そう言って横にあったカメラにほお擦りした。 その更に横には、数枚の写真。これが今日手に入れた彼女の獲物だった。 リリアン女学園高等部 新聞部副部長。 そんな肩書きを持つ詩子は、リリアン高等部の皆に新聞部の発行物「リリアンかわら版」で、 面白おかしい記事を提供するのが現在生きがいとなっていた。 1年生だった去年も色々と記事を書いたが、 その中でも生徒会である山百合会を題材にした記事が一番受ける事を詩子は知っている。 だから、山百合会の話題については逐一チェックをしているのだ。 去年の秋、初めてロザリオを受け取った伝説の白薔薇(ロサ・ギガンティア) 名倉由里さまの妹である名倉由衣さまが、前年度白薔薇の妹となり、 白薔薇のつぼみ(ロサ・ギガンティア・アン・ブウトン)となられた。 その時の記事は学校全体を興奮の渦に巻き込んだものだが、それ以来ぱっとしたネタが掴めないでいた。 一応親友である里村茜が黄薔薇のつぼみ(ロサ・フエティダ・アン・ブウトン)として山百合会に居るが、 口の堅い茜はいくら頼んでも山百合会の事は教えてくれなかった。 そこら辺がまた茜の良い所なのだが、記事のネタが無い事には困っていたのだ。 そんな詩子が今日手に入れた写真には、 赤薔薇(ロサ・キネンシス)と仲良く連れ立って歩く編入生の姿があった。 一人だけ違う制服と言う事で、結構方々で話題になっている編入生と、 赤薔薇様との2ショット。これが受けないわけは無い! そう考えると居ても立ってもいられず、速攻で家に帰って現像、 現在はその写真を元に記事を書いていると言うわけだ。 今年度一発目の記事は大成功間違い無しよ。ふふふ… そんな無気味な笑いが、柚木家に響いた。 その声を聞いて詩子の母が持ってきた食事を落としそうになったのはまた別の話。