おかしい… 留美は校舎を歩きながら疑問を感じざるを得なかった。 昨日の晩届いたリリアンの制服を着ているにも拘らず注目されている。 いや、むしろ昨日よりも注目度が上がっているような気がする…。 「ごきげんよう」 そう思いながらも挨拶と共に教室に入った留美は、入るなり十数人のクラスメイトに囲まれた。 「ねぇ、紅薔薇様とはどんな関係ですの?」 「何のお話をなさったの?」 「もしかして、ロザリオを戴いたとか?!」 凄まじい勢いのクラスメイトに数歩下がる留美。 その時、出入り口の混雑に紛れたのか、床に1枚の紙を見つけた。 少しでも追求から逃れる為にそれを拾って見た留美は、そこにあった文字と写真を見て固まった。 『紅薔薇様の一時』そんな文字が一面を飾るその紙の真中には写真。 写真は昨日駅で雪見さんと別れた時、雪見さんが留美の襟元を正すした時の光景が克明に写っていた。 昨日の少年達なんて比べ物にならないほど激しい、 クラスメイト達の波状攻撃をどうにか切り抜けた留美は、 授業中も何かと此方に集まる視線を感じていた。 たくさんの視線の中でも一際鋭くキツい視線は、 昨日いろいろ教えてくれた広瀬真希さんから感じるように思えた。 昼休みになると、留美はすぐに教室を出た。 そうしないと、また波状攻撃が始まるからだ。 しかも今度は昼休み中ずっと。考えるだけでげんなりする。 一応お弁当は持って出て来たので、どこかで食べる必要がある。 食べる場所を探していると、丁度良さそうな木陰が外にあった。 「あ、先客が居るね」 「…そうですね」 お弁当を包むハンカチを下に引いてその上に座る。 そうやってお弁当を食べている留美は、声に気付いて上を向いた。 見ると、留美と同じようにお弁当を持った2人が前にいた。 どうやらいつもここで食べている人達のようだ。 「あ、お構いなく」 そう言って少しずれようとすると、右の女の子が首を傾げる。 「えーと、留美さん?」 そう言われてよくよく見ると、同じクラスの瑞佳さんだった。 「瑞佳さん。あ、いや」 確か、白薔薇のつぼみ(ロサ・ギガンティア・アン・ブウトン)だったか。 そう言うと、瑞佳さんでいいよ。と言ってくれたので、そう呼ぶ事にした。 「一緒に食べない?」 「良いのですか?」 「うん。えーと…」 別に一人で食べたかったわけではないので誘うと、 金色の大きなお下げを持つ少女が静かにそう答えた。 無論OKだったのだが、少女の名前がわからずどぎまぎしていると、 「里村茜です。詩子が失礼な事をしました」 と自己紹介されて頭を下げられた。 …?何故頭を下げる? 「どういう事かしら?詩子さんって…?」 「あのね」 俯く茜さんに代わって、瑞佳さんが話し始めた。 「なるほどねぇ…」 ようやく理解できた。留美が朝に見た自分が載っている記事。 あの記事を書いた人が詩子さんこと新聞部副部長 柚木詩子。 そして、茜さんの無二の親友らしい。 「根は決して悪い子でないのですが…」 「記事の為なら突っ走る所があるんです…」 そう言って弁解する茜さんを見ていると、 詩子って人もそんな悪い人じゃ無いんだろうなと思えてくる。 悪い人にこんな良い友達は出来ない。 「少し大変になるかも知れません。申し訳ないです」 「ううん。いいのよ。別にやましい事があるわけでもなし」 ただ単に襲われているとこを助けて、話しながら帰って、 最後に襟を正してもらっただけの事。何がどうあるわけでもない。 「そうだねぇ…。紅薔薇様(ロサ・キネンシス)は人気もあるし、 未だに妹をお持ちでないから、妹になりたがっている人はいっぱい居るんだよ」 「ええ。そこら辺から妬み等を持った人が現れなければ良いんですが…」 「心配要らないと思うわよ。私と雪見さんは何かあるわけでもないし」 その言葉を聞いて、目を丸くして私のほうを見る二人。 「…雪見さんと呼ぶ辺りが何もないとは思えないのですが…?」 そう聞いて、しまったと思ったがもう遅い。 「うーん、これは一波乱ありそうだよ」 「そうですね…。私達もなるべく助力致しますので」 「…怖い事言わないでよ…」 乙女を磨きたい留美にとっては、せっかく女学園に入った事だし、 慎ましく綺麗な学園生活を送りたいのだ。 妬みとかどろどろしたものなんてまっぴらごめんである。 が、そういった希望は大抵適わない事になっている。