「んー、じゃあ別の件」 そんな留美に向かって、黄薔薇(ロサ・フエティダ)が話し掛ける。 「留美ちゃん、山百合会を手伝ってもらえないかなぁ?」 「えっ?」 「なっ…?!」 最初が留美、次が雪見さんの声。 何の事か分からずそれしか言えなかった留美と違って、 何か言いたそうな雪見さんをよそに、白薔薇(ロサ・ギガンティア)が話を続ける。 「ええとですね、現在山百合会は今居る6人で全員なんですよ。 6人居れば山百合会のお仕事は大抵こなせるんですんですが、 有事の際は人手が足りなくなったりするんですよ」 「そう。今が正にそうなんだよー」 毎年恒例、山百合会主催の新入生歓迎式。 そこでは薔薇様が新入生の首におメダイと呼ばれるものをかけるのだが、 おメダイを持つアシスタントが必ず必要になるらしい。 「私と由衣ちゃんは良いんだけど、誰かさんは補助役が居ないから」 ちくちくと雪見さんを突っつきつつ会話は進む。 「そうなんですよぉ。澪ちゃんは山百合会に入ってはいますが、 一年生なのでおメダイを受ける側に回らなきゃいけないですし」 「だから、そのアシスタントを見つける事が急務なんだよ」 「なので、お手伝い戴ける場合、まずは紅薔薇(ロサ・キネンシス)の アシスタントをやってもらう事になりますねぇ」 「うん。そう言う意味でも、紅薔薇(ロサ・キネンシス)と親しい人が居てくれると、 ホントに助かるんだよー」 「それと留美ちゃんとは関係ないでしょう!!」 2人の薔薇様が交互に話す中に、雪見さんが割り込んだ。 まってましたと言うように、2人は会話を続ける。 「関係ありますよぅ。新入生歓迎式はすぐそこですよぉ? 紅薔薇(ロサ・キネンシス)が留美さんを連れて来られたから、 ぎりぎりですがその問題も解決したと安心していたのに…」 そう言って、わざとらしく頬に手を当てて溜息をつく白薔薇(ロサ・ギガンティア)。 「そうそう。今日は最初からその事を話す予定だったんだから、 解決していないと分かればその話題を持ち出すのは当然だよ」 ねぇ。と尋ねられた茜さんは本から目を離さずに、はい。と一言答えた。 ついでに、横に居る澪さんのスケッチブックにも『そうなの』と書かれている。 先ほど来た瑞佳さんは、そういえばそんな話があったかも。と独り言。 「……だとしても今言う必要は無いでしょう?」 皆に肯定されては言い難いのか、少し小さな声で雪見さんが反論する。 「ちょっとでも関係を持った人に手伝って貰った方が何かと上手く行くよ。 だから、留美ちゃんが来ている今言う意味はあると思うな。」 「でも…!」 「今まで妹かお手伝いの人を見つけてないんですから、誰に決まってもOKなんじゃないんですか?」 「そうそう。嫌なら先に連れてきてくれればよかったんだよー」 「…」 「と言う事で、留美ちゃん」 雪見さんのKO負け。 俯いた雪見さんを気にかけることもなく、黄薔薇(ロサ・フエティダ)は留美の方を振り向いた。 「やる必要は無いわ!」 「はいはい。紅薔薇(ロサ・キネンシス)はちょっと黙っててくださいね〜」 「どうかな?」 雪見さんの言葉を遮って、2人が聞いてくる。 「どうかな?と言われても…」 突然手伝って欲しいと言われても、ちょっと決めかねてしまう。 確かに、雪見さんのお手伝いはしてみたい気もするけれど、 その雪見さんの先ほどの様子を見ていたので尚更決め難い。 「少し、考えさせて下さい」 少し時間を置いて考えてみた方がいいだろう。 「うーん、分かったよ。でも明日にはお返事頂戴」 私が返事を遅らせて、かつダメだった場合、他の人を探す時間が無い。 と言うのが理由だそうだ。はい。と返事して退室した。 私が出て行く間、雪見さんは俯いたままだった。 そして留美は、歩いて校門まで来た所で、 本題である詩子さんの事を茜さんに聞くのを忘れた事に気づいたのだった。 そんな留美だから、真希さんに無論その場を見られているなんて思ってもみない。 それを知るのは、次の日登校した時だった。