目的の人はすぐに見つかった。 当然だろう。その相手は間違い無く私の目の届く位置に居る。 相手の目的が私の姿である以上、最低でも私が見える位置に居るからだ。 それでいて、カメラを構えているという姿。少々隠れようが分かる。 「やばっ…!」 相手がこちらの視線に気づいたのか逃げる姿勢を見せる。 だが、屈んでカメラを構えている状態だと初動が遅れる。 その間に、留美は相手の近くまで一気に詰め寄った。 「詩子さんね?」 相手が逃げ出す直前、そう言って肩を掴む。 「あ、あら、貴方は留美さんじゃありませんか偶然ですわねぇ」 振り返った詩子さんは、しどろもどろに挨拶をする。 かなり怯えているような気がするが、何故だろう。 「話は茜さんから聞いてるわ。新聞部副部長なのよね」 「茜、喋ったわね…」 「心配しないで。先の記事がどうこう言うわけじゃないわ」 「そ、そうなの…?」 心底ホッとしたという溜息をつく詩子さん。 聞けば当日私が木刀で少年達を倒す所から見ていたらしく、 さっき捕まった時に、次目覚めるのは病室?と思ったとか。 失礼極まりない話である。 「貴方色々な情報を知ってるわよね?リリアンの情報とか」 「そうよ。詩子ちゃんに分からない事は無いわ」 「それなら、真希さんの家は分かる?」 「真希さん…留美さんのクラスの広瀬真希さんね。ちょっと待ってて」 先ほどの態度はどこへやら。意気揚揚と手帳をめくり始めた。 「あったわ。T駅降りてちょっと歩いた所。そこで両親+弟と4人暮らし。 弟さんがかなりの不良で、その関係で両親がケンカしてるわね。 最近は母親が実家に帰って、弟さんも帰ってきてないらしいから、 お父さんと二人暮ししてるんじゃないかしら。あ、これ電話番号ね」 「あ、ありがとう。もう十分よ…」 知らなくてもいい情報までいろいろ教えてくれる詩子さん。何所から調べてきたんだろう。 ニュースソースは聞かない方がいい気がしたので、黙って電話番号の書かれたメモを受け取った。 「どういたしまして。また何か良いネタ提供してね♪」 そう言うと、詩子さんはスキップしながら帰っていった。 よく考えてみると、今ここに居たという事は雪見さんと一緒に居たのを見られてるわけで…。 何か凄く嫌な予感がしたが、もう遅いのでそちらは諦めて、駅の電話へと向かった。 先ほど貰ったメモの番号を押したらすぐに繋がった。 30分後、留美は真希の家の前に着いた。家の前には、真希が立っていた。 先ほど電話でアポを取ったからだろう。 「何よ。…文句があるなら、先生にでもなんでも言えばいいじゃない!」 「怖くなんかないわよ。どうせ紅薔薇(ロサ・キネンシス)には愛想つかされたんだから」 「もう、失うものなんてないもの!好きにしなさいよ!」 私の顔を見るなり、真希は騒ぎ立てた。 あまりに耳障りなので一言黙れ。と言うと、押し黙った。 構わずに、留美は続けた。今の言葉を聞いたら気が済まなくなった。 「何であたしがここに居ると思うの? 先生に言うなりしてれば今ここには居ないわよ」 その言葉を聞いて、真希は俯く。留美は構わず続けた。 もはや、真希がどういう行動を取ろうが関係ない。言わずにはいれない。 「雪見さんは、貴方を許せと言ってたわ」 「貴方があんな事をしたのは、私を想っての事だからってね」 「殴られた自分の肩よりも、私が貴方を公的に訴える事を心配してたわよ」 「自分が庇った事で、無かった事にして欲しいってさ」 「だから、その件はチャラにする事にしたのよ」 その言葉を聞いて、今度は真希の目から涙がこぼれた。 「紅薔薇(ロサ・キネンシス)…」 そんな言葉を呟く真希に、留美は言葉を続ける。 「でもね、その件とは別に、どうしても我慢がならない事があるのよ」 「何よ…」 「それはね…」 パシィン! 不意打ち一発。留美の手が真希の頬を叩いた。 「周りに迷惑かけるんじゃないわよ、子供じゃあるまいし。 文句あるなら、ちまちまやってないで直接かかってきなさい」 真希は、泣いた。