紅薔薇様(ロサ・キネンシス)と留美さまがどこかへ向かうのを見たのは、 マリア祭が終わった後教室へ戻った後、帰ろうと校庭へ向かっている時の事だった。 いけないことだとは思いつつも、私は彼女達に着いていった。 二人は、校内にある古い温室へ入っていった。 そして私は見た。紅薔薇様(ロサ・キネンシス)が留美さまにロザリオをかける光景を。 知らず 涙が出た 私が望んではいけない光景は、とても綺麗だったから。 「ようやく、渡したのね…」 目の前の光景に見入っていた私は、背後から聞こえた声に心底驚いた。 振り返ると、深い紺色。リリアンの制服のスカート部分の生地だった。 そして上を向くと、腕組みをして温室を見ている真希さまの姿があった。 「真希…さま…?」 「あら、私の事を知っているの?光栄ね。…?」 私の顔を見た真希さまの言葉が止まる。慌てて涙を拭いた。 「貴方は、倉田佐祐理さんね?」 真希さまは、涙の事には触れずに話を続けた。 「はい。私の事をご存知で…?」 「ええ。貴方、有名だもの。薔薇様を目指す令嬢が居るってね」 そう言って真希さまは笑った。 お姉様方にも名前が知れ渡っているんだなと、私は今更ながらに思う。 薔薇様になりたいと考えている(と思われている)私を、 お姉様方はどう思われているのだろう? 「私と同じね…。」 「えっ?」 「私もね、薔薇様を目指していたの」 「あっ…」 心当たりはあった。無尽蔵に飛び交う噂のうちの1つ。 真希さまが薔薇様の座を狙っているという噂は本当だったと言うわけだ。 「だから、前から少し気になっていたのよ。 貴方は何故薔薇様を目指すのか。が」 なるほど、同じ事を考えているから、気になっていたのだろう。 しかし、真希さまの期待には添えそうもなかった。 「あの…違うんです」 「何が違うの?」 「私は…薔薇様を目指しているわけではないんです」 「そうなの?」 ふーん…と呟いて考える真希さまは、 私の言った事を吟味しているようだった。 「…ならば何故、貴方はスールを持たないの?」 「私には…資格がないんです」 「それは…どう取ればいいのかしら…?」 「私に関ると…不幸になるんです。だから…」 そこまで言って、私は再び沸いた涙で言葉に詰まった。 言ってて悲しかったから。思ってて哀しかったから。 でも仕方ないのだ、これは私の罪なのだから。