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「ごちそうさまでした、志貴さん」

「またね、晶ちゃん」

 アーネンエルベで瀬尾晶と別れた遠野志貴は、急いで帰路に着く。

「遅れると、秋葉がうるさいからなぁ…」

 妹に叱られるからという理由が何とも情けないが、志貴は真剣である。
誇張なしで生と死の境界を彷徨える罰が与えられる事が多いからだ。
 とはいえ、あまり運動が出来ない志貴は早足で歩くのがせいいっぱい。
だからこそ、速攻帰らないと遅くなってしまう。

「ぐっ…!」

 わき目もふらずに歩いていると、突然の頭痛。
日常的に頭痛は起こるのだが、今回はそんなものとは違った。

 そこはいつも通る公園だった。
昼なのに人が一人も居ないのだが、特に気にはならなかった。

ナゼナラ

ヨウガアルノハヒトリダケダカラ

 人の限界を超えた速度で、志貴は中央に佇む影に突進した



 レミリアは、公園でひと休みしていた。
周りには人を寄せ付けない結界を張ってある。
それなのに、近づいてくる1つの気配。

「あら、来訪者?」

 レミリアがそう思った時、その気配はレミリアの横にあった。
人間には視認すら難しい突進を、レミリアはあっさりと交わして距離をとった。

「遊んでくれるのかしら?」

 そう言っている間にも目の前の相手、
遠野志貴は信じられない速度でレミリアに向かってくる。

神罰『幼きデーモンロード』

 しかし、レミリアは臆する事なく虚空を手で一蹴する。
触れれるだけで志貴に致命傷を与えるレーザが、レミリアと志貴の間に飛び交う。

『ジャマだ』

 だが、志貴はそのレーザそのものを切り裂いて突進してくる。
切り付けるナイフ自体が消失してもおかしくないはずだが、
綺麗さっぱり消え去るのはレーザの方だった。

「面白いわねぇ」

 感心しながら、次の攻撃を出すレミリア。

獄符『千本の針の山』

 無数の弾が志貴を襲うが、志貴はその尽くを切り捨てて向かってくる。

「凄いわねぇ」

 肉薄して放たれる攻撃を蝙蝠化して交わしながらレミリアは考える。
目の前の相手は、恐らく死に関する何らかの能力を持っている。
以前一緒にお花見をした幽霊、西行寺幽々子のような能力だろう。

「仕方ないわねぇ。これ疲れるんだけど…」

 蝙蝠を数匹放って時間稼ぎをする間に、
レミリアは力を集中させて1つの魔法を放つ準備をした。
 魔法。現代科学で実現不可能な魔術の総称。
この世界でむやみに使っていい言葉ではないが、
レミリアのこの技には当てはめてもいいだろう。

 魔法を放つと、レミリアと志貴は光と共にその場から消え去った。
後に残った結界も、すぐに消えた。


「じゃあ…君は吸血鬼なの?!」

「ええ、そうよ。信じられない?」

「…いや、信じるよ。自分の知り合いには人外が多いし…」

「まあ、どっちでもいいわ。ところで、帰り道知らない?」

「幻想郷…。聞いた事も無いなぁ…。とりあえず、うちにいこう」

「いいのかしら?」

「ああ、大丈夫だよ。…多分」

 数分後、二人は遠野家へ向かいながら話をしていた。
まるで、先ほどの事が全て無かったかのように。
それは正しい。先ほどの戦いは無かった。しかしそれは正確ではない。

異界『THE WHEEL OF FORTUNE』

 他者の運命を操るという、レミリア最大の奥義。
自分と関った者、及び自分の運命を操る技である。
 志貴は、レミリアと戦うと言う運命から、
レミリアと平和的出会いをするという運命に変わったのだ。

 別段戦ってもよかったのだが、なぜレミリアは奥義を使ったのだろう?
公になれば6人目の魔法使いにもなれる大技。そう簡単に使う事は無い。
 志貴の中に見えた稀有な出会いの運命達、
それがレミリアに奥義を使わせたのかもしれない。
それは暫く後に実現する事になる。



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