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「さて、何から話したものか…」

 何とか秋葉を説得し、居間へ集合した志貴達は、まず状況の整理から始めていた。

「で、その方は誰なんですか?」

 かなーり刺々しさが残る言葉が飛ぶ。

「名前は、レミリア・スカーレットよ。」

「スカーレット…?!」

 その言葉を聞いたアルクェイドとシエルが戦慄する。

「どうした?」

「…昔、スカーレットという真祖が居たのよ。
凄まじい力を持っていて、真祖の王である朱い月と殆ど互角だったの。
その名から、通称『紅い月』と言われていた…」

「でも、ある時突然姿を消したの。世界中何処にも見当たらなかった。
それ以来、『紅い月』は出現していない…」

「そんなに強かったのか…?」

「恐らく、私と互角かそれ以上よ」

「なっ…!」

 もしこの子…レミリアちゃんだっけ?がその『紅い月』だとすれば、
世界を揺るがせかねない者が出現した事になる。
 しかし…

「なぁにそれ?」

 レミリアちゃんの返事は予想外のものだった。

「偶々名前が同じだけよ。私はヴラド・ツェペシュの末裔」

「は…?」

 どーぉ?びっくりした? という表情のレミリア。
完全に嘘なのだが、騙される奴は騙される。
…が、今回は場所が悪かった。

『…ふざけた事を言っている輩が居ますね』

「あ、シオン…」

 よりによって、関係者の居る所だったのだ。

 シオン・エルトナム・アトラシア。
件のヴラド公を吸血鬼化せしめたと言われている、
死徒27祖の第13位「ワラキアの夜」に噛まれた者。
ワラキアの夜が滅んだ今は、形式的に彼女がワラキアの夜と言えなくもない。

「どうしてふざけた事なの?」

「代を重ねたとて、あいつの眷族ならばすぐに分かります。
貴方からは気配はしない。」

「ここには面白い人が多いわねぇ」

「誰が面白い人ですか!」

 戦闘態勢に入ろうとしたシオンを慌てて止める。

「とりあえず、今はこれからの事を考えないと…」

 志貴に説得されて渋々引っ込むシオン。

「では…聞きたい事はいっぱいありますが、
まず貴方は何処からきたんですか?」

「幻想郷よ」

 シエル先輩の質問に対して、またよく分からない答が出てきた。

「幻想郷…?聞いた事ないわね」

「同じく聞いた事ありませんね…。どこかの隔離された世界でしょうか…」

 アルクェイドやシエルも分からないといった表情を浮かべている。

「それでは、何のためにこの街に来たんですか?」

 この街には異能者が揃っている。
そこに更なる異能者が来る事は、軽んじれる事ではない。

「散歩してたら、たまたま着いちゃっただけ。
だから、夜までには帰らないと」

 思いっきり軽い理由だった。

「…つまり、敵意とかはないって事だね?」

「敵意?ないわよ」

「そっか」

 他の人に危害を加えないなら、まあいいだろう。

「志貴、油断しないでよ…」

 緩んだ表情を非難するようにアルクェイドが呟く。

「大丈夫だってアルクェイド。
大体、このメンバー相手に暴れても仕方ないだろう」

 真祖の姫に、埋葬機関の第7位、そして遠野家当主。
この面子を相手に生き残れる者を探す方が難しい。
(一番やばいのは志貴だが、本人は特に気づいていない)

「何言ってんの、その子、死徒二十七祖級の力を持ってるわよ」

「は…?」

「間違いないですね。更に言うと、先ほど何らかの力を使いましたね?」

 シエル先輩の言葉で、何故か頭がズキっと痛んだが、すぐ回復した。

「結界を張っただけよ。誰かに見られると面倒だから」

「え、でも俺は…」

「貴方は特別なのではないのかしら?」

 志貴の疑問はその一言で片付いた。

「ちょっと待ってよ!あの気配は結界なんてものじゃなかったわよ。
それを感じたから飛び起きてここまで来たんだもの。
どう考えても固有結界レベル、いやもしかしたらそれ以上だったかも…」

「力の加減を間違えたのかもね」

 問い詰めるアルクェイドに対して、しれっと答えるレミリア。

「…まあいいわ。志貴に手を出さないなら」

 いろいろ言いたそうだったが引き下がるアルクェイド。
代わりにシエル先輩がレミリアと向き合った。

「しかし、このままだと拙いですよ…」

「ただでさえ、この辺りはネロやロアが滅んだ事で、
世界中の裏の者達から注目を浴びています」

「その上27祖級の力を持った吸血鬼が新たに現れたら、
この辺りで裏の戦争が起こってしまうかもしれません」

「なので、早急に元の場所に戻ってください。
…最悪の場合、私自身が貴方を処断しなければならなくなります」

 教会から指示が来れば、シエル先輩はやらざるを得ない。
知り合い同志が殺しあうのは絶対に見たくない。
(いつも庭先でそれに近い事をやっているが、あれはまあじゃれ合いと言う事で)

「どうやって戻るのかしら?」

「それは…貴方は分からないんですか?」

「分かったら最初から戻ってるわ」

 レミリアがわざわざ奥義を使った理由がそれだ。
帰り方というか、適当に歩いていた為そもそも結界の場所が分からないのである。
それらを探る為、人外の知り合いが多い志貴に着いていったのだ。
 しかし、どうもそれも空振りのようだった。

「兄さん!」

 暫く皆で悩んでいると、何時の間にか居なくなっていた秋葉が、
大声をだしながら入ってきた。

「どうしたんだ、秋葉?」

「気をつけて下さい…。館に侵入したものが居ます」

「うちに忍び込むなんて…」

 何て無謀な…。この館は、住人の強さもさる事ながら、
あらゆる所に琥珀さん特製の罠が設置してある。
人外の者でも並の者なら館内で滅殺されて終わりである。
(尤も、罠のターゲットであるアルクェイドとシエルは難なく交わしているが)

「そうでもありません…。翡翠と琥珀が、気絶させられていました」

「なんだって…? 二人は大丈夫なのか?」

「ええ。二人とも、自分の部屋のベッドに寝かせておきました」

「私はこれから迎撃に向かいます。用心してください」

 そう言って去っていった秋葉の髪は赤く反転しかかっていた。
人外の血を引く遠野の力が目覚める証。
何もなかったとはいえ、二人をやられてかなり怒っているようだった。

「まて、俺も行く!」

「私もお手伝いしましょう」

「面白そうだから私もー」

 志貴,シエル,アルクェイドも動いた。

「私はどうすればいいのかしら?」

 一人残されたレミリアもまた、適当に動き始めた。


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