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 結界を抜けた先にあった家の中、
これよ。と言って見せられた刀を前に式は固まっていた。
 刃,鍔,柄,鞘どこを見ても一流より上の気配が醸し出されている。
名刀中の名刀である。そして何より気になるのが、菊の紋。

「…なんでここにあるんだ?」

「ずーっと前からうちにあるわ」

「ずっと前っていつからだ?」

「800年くらいかしらねぇ」

 式の心臓がドクンと高鳴った。この刀が作られてすぐにここに来たとする。
その場合、今から800年前、大体1200年前後に作られた刀という事になる。

まさか…これは『菊一文字則宗』か?!

 式は漏れ出た言葉を心の中で速攻否定する。無理もない。
これが、菊一文字則宗の名を冠せる刀だとすれば、それはとんでもない事なのだから。

 菊一文字則宗という名を持つ刀は正確には存在しない。
一文字の名が付く刀の中に菊の印を持つ刀は幾つかあるのだが、
菊一文字の菊の文字はそういう意味ではない。皇室という意味があるのだ。

 そういう意味で『菊一文字則宗』と呼べるのは、
1200年前後の天皇である後鳥羽天皇が一文字派の刀匠「則宗」に作らせ、
大層気に入って菊の印を認めたと言われる刀1つのみ。
 もし現存すれば1億円を下らない、それどころか国宝に指定されて然るべき刀。

辻褄は 合っている

「これを、貰ってもいいのか?」

「ええ、特に要らないから」

「…何か裏があるんじゃないだろうな」

「無いでしょ。多分」

 思いっきり怪しい…。
しかし、目の前の刀が欲しいという誘惑には勝てそうもなかった。

「…分かった。ありがたく戴いておこう」

「ええ。どうぞ」

 刀を受け取る。受け取った時、心が騒いだ。

「じゃあ、俺は帰る」

「分かったわ。案内するから先に外で待ってて」

 そう言われて式は家を出た。

「まあ、渡りに船だな」

 手に入れた素晴らしい刀を見ながら、式はそう呟いた。

「ちょっと見てみるか」

 さっきは確かめる為にちょっと抜いただけだったので、
今度は完全に抜刀してみる。シャッという音と共に、刃が現れた。

「…いいなこれは」

 うっとりしながら呟く式。
そして、両手で持ってみる為に、握っていた手にもう片方の手を添える。

その瞬間

気配が

式を覆った

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