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式は気づいたら紫の家とは違うどこかの庭にいた。
しかし、周りの事より刀の握りが気に入らなかったので持ち替える。
その瞬間、式から爆発的な殺気が周りに放たれる。
式の得意とする、武装による意識変化である。
…尤も、今の意識は式のものではないが。
「何事?!」
式の撒いた殺気を感じて、少女が飛び込んできた。
名は妖夢。式が今居る家の庭師で、半幽霊半人間の剣士である。
「貴方は…?」
「シネ」
妖夢が式を見た次の瞬間、式は妖夢の目の前に居た。
妖夢はとっさに特殊能力「時間低下」を使用、時間の流れが遅くなる。
時間低下状態ですらなお速い4つの斬撃を何とか交わしつつ、妖夢は距離を取った。
「何者…!?」
そう呟きながら振り返る妖夢に向かい、再び式は接近する。
数メートルの距離があったが、その速度の前に弾幕を張る隙はなかった。
再び時間低下を展開し、式の動きが鈍くなる。…しかし
ザンッ!
「なっ…?!」
式は時間低下の能力そのもの斬り、無効化した。
操る神刀が成した業であった。
間に合わない…!
発生すると思っていた時間低下の消失。
その手違いが生んだ隙は、この場合致命的過ぎた。
守る術のない妖夢の体に刀が吸い込まれていく。
その直前、蝶が舞った
「大丈夫?」
気が付いた時━といっても先ほどから数瞬の後だが━、
妖夢の前には先ほどの剣戟を受け止めたのか真っ二つになっている蝶弾と、
いつものように佇む自らの主人の姿があった。
「幽々子様…」
「大きな反応があったから何事かと思って来てみれば…」
そう言って幽々子は目の前を見る。目の前には当然式。
式はターゲットを幽々子に変えたのか、幽々子をじっと見つめていた。
「その刀…福岡一文字のものね。私の仲間が一緒に居るみたいだけど」
「どういう事で…?」
「操られてるのよ。刀に、というか刀に憑いてるモノに」
「成る程…」
先ほどの無機質な声は相手の中の亡霊が発したものか。
そもそも相手が何故ここに居て亡霊に憑かれてるのか分からないのだが。
「とりあえず、止めないといけないわね」
そう言って式の方を見る幽々子と、式の眼が合う。
その瞬間、紫電のように身体を走る感覚が幽々子にあった。
(あの眼…私と同じ力を持っているようね…)
どうやらそれは式も感じたのか、動きが止まっている。
その間に、幽々子は1つの印を結ぶ。
「本来こんな使い方をするものではないけれど…」
そう言うと、結んだ印を開放した。
次の瞬間、式の周りに謎の点が発生し展開、
式は大きな黒色の球体に四方八方を囲まれる。
それと共に、式の体から先ほどまで漂っていた危険な気配が消失していった。
「まあ、こんなものね」
「幽々子様…今のは…? あの球体が気配を吸い取ったように見えたんですが」
「単に人間と亡霊を分けて、亡霊を然るべき所に返しただけよ」
「はぁ…」
「本来は1つに纏めたものを直接ぶつけて使うんだけど、今回は特別ね」
球体の正体は冥界そのもの。幽々子は式を冥界という世界で囲ったのだ。
結果、世界が混ざり合い現世と冥界の境ともいうべきあいまいな世界が出来る。
そんな所に在るモノはない為、そこにあるモノは現世と冥界のいずれかに飛ぶ。
相応しい方へ飛ぶ為、亡霊は消え式は残るという結果が出たのである。
境界『黄泉比良坂』
本来は相手の居る位置に、冥界という世界そのものを呼び出す技である。
冥界に触れた対象は、そのモノでいう『死』に至る。
刀であれば砕け、人であれば生命活動を停止する。といった具合だ。
冥界に触れて助かるには、対象が世界と同等の存在である必要がある。
一個の生を持つ存在にこの技を凌ぐ術はない。
また、術後のタイムラグがない上に結界などの防御機構の影響も殆ど受けない。
防御不可能で回避もほぼ不可能という、両儀式本来の能力『直死の魔眼』すら
遥か上回る、西行寺幽々子最大最強の奥義である。
「あら、よっぽど刀が好きなのねぇ」
そんな大技を放った割にはけろっとしている幽々子は、
憑き物が落ちたかのように(というか落ちたのだが)眠る式を見た。
式は刀を握り締めたまま、その場に倒れそのまま眠っている。
「色々話も聞きたいし、向こうに行きましょうか」
「はい」
「あ、彼も一緒ね。向こうまで連れていって」
「…了解しました」
少し渋ったものの、お嬢様の命令は絶対。
式を背負い、母屋に向かう幽々子の後を追った。
「あの…」
「ん?」
途中、前を歩く幽々子に妖夢から声がかかる。
「先ほどはありがとうございました」
「貴方が居なくなるの、嫌だから」
「…光栄です」
そんな言葉を交わしながら、家へと着いた。
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