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 その名を聞いて、ふと昔の事を思い出した。
それは2年の眠りから目覚めて半年くらい経った頃だろうか。
自分が直死の魔眼を持つと知った後に、魔眼について調べる為、
家にある魔,退魔に関する資料を漁った事があった。

 その中の1つにあった、とある歌聖の少女の話。
その少女は死を操る力を持っており、日に日に大きくなる自分の力を憂い、
桜の下で永遠の眠りについた。というもの。
 御伽噺だろうと思いつつも死を操るという所に多少の興味を抱いた話。
その話の少女の名、それが確か「西行寺幽々子」だったはず。

「何故、俺を助けた?」

「お話したかったから…かしら」

「永く在るけれど、同じ能力を持つ者はあまり居なかったから」

 少女の話が載る文献は1000年前の文献だった。
その後どうなったかの記述はどこにも見当たらなかったが、
精神体だけとなって存在し続けていたのか。
 特殊存在の能力は才能と存在年月に比例する場合が多い。
死を操る能力をもちながら1000年という年月を経た霊体の能力、
同じ能力が居ないのは当然だろう。同じく死に関係する自分でも話にならない。

「助けてもらった例だ。俺でよければ話に付き合ってやる」

「そう。じゃあ質問するわ」

「貴方は、貴方の眼をどう思う?」

「どうも思わない」

「何故?死を見る貴方の眼は、貴方に普通ではない生き方を強いているはずよ?」

「確かにそうだ。俺は、人を二人殺している。二人とも人から外れていたがな」

「だが俺は生きる。二人殺してまで在る命を無駄には出来ないからな」

「そうね…。そんな考えも、あったかもしれないわね」

「お前の事は俺は分からない。だから」

「今お前がここに居るおかげで俺は助かった。と言えるだけだ」

 そう言い終わると同時に立ち上がる。二人に顔が見えないように。
妖夢がチラッと見た式の頬は真っ赤に染まっていた気がした。

「もう行くの?」

「ああ。他に話したい奴が居るからな」

「うちを出たら、自動的にここに来る前の場所に戻るようにしておいたわ」

「悪いな」

「気にしないでいいわ。面白い話だったし。また会いましょう」

 もう大丈夫だと言っていたが、一応慎重に刀を拾うと、式は歩き出した。

「もう会う事はないかもしれないぞ?」

「死んだら会えるわ。嫌がおうにでもね」

「…縁起が悪すぎるぞ」

「幽霊に縁起を問いてもねぇ」

「言った俺が悪かった」

 そう言うと、式は襖を開けた。そして廊下へと出て、庭へと出る。
瞬間、風が舞い式の姿は薄れてゆく。

「またね」

「ああ」

 消える直前にそんな言葉を残し、式と幽々子は分かれた。
式が出て行った部屋には、妖夢と幽々子が残された。
二人は、式が再び来るまでほんの少し待つ事になる。ほんの、数十年ほど。


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