遠野秋葉に飲み物を運んでいる横で、トーコが藤乃と話している。 遠野秋葉の体調を看ながら、其方に聞き耳を立てた。 話は数時間前、遠野秋葉が式と出会う前に遡る。 事の始まりは、学園交流が終わった時、鮮花が見つけたA4の封筒だった。 それは遠野秋葉が慌しい交流の中で忘れていったもので、 中身は今回の学園交流に関して、お役所的に必要な書類だった。 聞けば明日の朝すぐに必要なものだそうで、2人で届けようという事になった。 そして、彼女等の泊まるホテルに向かう途中にそれは起こった。 始まりは一瞬だった。 学内にある森の中、妙な気配がすると言った鮮花が、 突然身を翻した次の瞬間、鮮花が居た位置に、他の誰かが居た。 その相手は青年と言うには少し歳をとっていそうな男性で、 手には太鼓を叩くバチのようなものを持っている。 混乱する頭の中でも、色々あった私の体は反応してくれたようで、 こちらに顔を向けた相手を私も視た。 次の瞬間、意識して視た相手を捻るという、私の特殊能力が発動する。 しかし、「曲れ」と念じる前に相手は姿を消し、結果目の前の木が音を立てて倒れた。 「逃げなさい!藤乃!!私が引きつけておく間に!」 その言葉と共に、鮮花の放った炎が相手の居た地点を焼いた。 同時に、私は鮮花に駆け寄り、お互いの背中を合わせた。 鮮花は何か言っているが、無視してそのまま木のそばへ連れて行き、、 お互い木を背後にして臨戦体制を整える。 逃げるのは不可能。悪いが鮮花では引き付ける事すら不可能だろう。 相手は、タイムラグがほぼ0である私の攻撃を初見で避けたのだから。 …しかし、私ならどうだろう? 先ほどの攻撃は相手もさすがに警戒したはず。慎重に来るのではないか。 その間に鮮花を逃がす事は、少なくとも逆よりは確率が高い。 「鮮花、私の言う事をよく聞いて。このまま真っ直ぐ…?!」 今後の事を伝え終わる前に、それは起こった。 まず、私と鮮花が背後に抱く大きな木が揺れて、葉が擦れる音。 その後、一陣の風と共に鈍い音。気が付いたときには全て終わっていた。 鮮花の方を見た私の目に留まったのは、お腹にバチを叩きつけられたまま、 相手に抱かれている鮮花の姿だった。 次の瞬間、相手を視ようとした私の目の前に木の枝が降って来て、それが捻れた。 (その枝は、相手が鮮花の所へ垂直落下する為に蹴ったものだっただろう) 木の枝が地に着く頃には、既に相手は居なかった。 「…先程、鮮花の魔力が大きくはじけたのを感じたが、それか…」 全て聞き終わると、トーコがふと呟いた。 それを肯定するように首を縦に振った藤乃は幹也の方を向き、頭を下げる。 「ごめんなさい…幹也さん…私…私…」 「気にしないで、藤乃ちゃんの所為じゃないよ」 「ぅぁ…うああぁぁぁぁ〜〜!!」 幹也が頭を撫でると、吹っ切れたのか、藤乃は只管泣き続けた。 遠野秋葉が起きて、襲ってきた変な奴も起きた辺りで、藤乃は泣き止んだ。 それを見て自分は、まず一番疑問に思っている事を質問した。 「それにしても、一体誰が何の目的でやった事だ?」 猫娘と、既に傷が治りかけている襲撃者に、視線を送る。 暫くすると襲撃者の方が静かに口を開いた。 「…冥王の仕業だろう…」 「冥王だと…?」 「ああ、自分は元々それを追ってこの国に来た…」 「私も、それを追って来たにゃ。」 確証は無いが、1つの答は得られたので、次の質問に移る。 「そもそも、お前らは何者だ?」 「私はヴァンパイアハンター「ドノヴァン」だ。 この猫娘は、ダークストーカーと呼ばれる者達の一人だ。」 「そうにゃ」